瓜生中 公式ブログ
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家宅

「火事だ!」
檀一雄の『火宅の人』というベストセラー小説がある。「家宅」は『法華経』に出て来る言葉で「三車家宅(さんしゃかたく)の譬喩(ひゆ)」というエピソードが説かれている。

それによると、ある長者の家が火事になったとき長者の3人の子どもたちは家の中で遊びに興じていた。
心配した長者や家の者がいくら非難するように言っても一向に聞き入れない。

一計を案じた長者は家の外に子どもたちが欲しがっていた玩具を満載した三台の馬車を用意したから早く出てくるようにと言った。
すると、子どもたちは玩具欲しさに急いで外に飛び出し、九死に一生を得たという。

つまり、われわれ人間が生きている世の中は燃え盛る家のようなものだ。
しかし、われわれは火事に気付かず欲望に任せて暮らしているのだ。

われわれは今までに関東大震災や東日本大震災などの大震災や台風、インフルエンザの洗礼を何度となく経験してきた。
確かにそのときは危機感にさいなまれ極度の恐怖を覚える。
しかし、「災害は忘れたころにやって来る」という諺が示すように、数年後には忘れてしまうのが常である。

そんな浅はかな人間に対して厳しい警鐘を鳴らすのが『法華経』の「三車火宅の譬喩」である。
ただし、これは何も世の中や人生を悲観的に捉えようとするものではない。

世の現実はそういうものだと捉えて日々を過ごすことができれば、いざ事が起きたときにも冷静に対処することができるのではないか。
一日に一度でも一週間に一度でも良いから「三車火宅の譬喩」を思い起こして心に留めておくことが必要なのではないだろうか。