瓜生中 公式ブログ
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日本の神話

ヤマタノオロチの正体

スサノオノミコトが退治したヤマタノオロチは八つの谷と八つの峯に及ぶ巨大な身体を持ち、その身体からはヒノキや杉が生え出てツタが生い茂っていったという。

この描写は言うまでもなく斐伊川(ひいかわ)上流の船通山(ふなどおりやま)一体の山地と、山から水を集めて斐伊川に注ぐ何本の沢をイメージしたもので、ヤマタノオロチは一体を守る水神(すいじん)としての蛇神(じゃしん・蛇を神格化した神)を象徴するものである。

また、大蛇の血が肥河を赤く染めたというのは、この一体が古くから砂鉄を多く産出し、鉄分によって川の石が赤く錆びていたことに基づいている。

オロチの腹が赤くただれているというのも同じ理由からだろう。

さらに、大蛇の目がほおずきのように赤いのは、鉄を溶かす溶鉱炉が赤く焼ける様子をあらわしたものとも見られている。

そして、最後に大蛇の尾から剣があらわれる。

近年、斐伊川一帯では多くの鉄剣が発掘されている。

鉄を産出するこの地域では、当時、大和などではまだ銅製の剣が主流だった時代に、いち早く鉄製の剣を作っていた。

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このような文化水準の高さが出雲を支え、大和朝廷を凌ぐ勢力を誇る原動力の一つになったと考えられている。

大和朝廷が中央集権を進める上で、出雲は最も手強い相手だった。先ず、ここを平定しなければ集権化は緒につかない。

記紀の神話で出雲のオオクニヌシが国神の最高権力者として記され、はじめにこの神を平定する話が登場するのは前述のような事情による。

もちろん、出雲平定の話が史実か否かは別としてである。

いずれにしても、ヤマタノオロチは斐伊川の上流域を象徴したものであった。そして、その大蛇が毎年、襲って来るというのは、洪水を象徴したものだ。

さらに、大蛇が娘を食べるというのは、洪水を鎮めるための人身供儀である。

古代社会において、自然の猛威を鎮めるために、生身の人間を生贄にしたのである。

このようにヤマタノオロチの神話は、実にさまざまな事象を背景として出来上がったのである。

一見、作り話のように見える神話だが、その背後には神話のモデルとなった人物や現実の風景や事物などが見て取れることが少なくない。

それを探すのも神話を読む醍醐味(だいごみ)である。