瓜生中 公式ブログ
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日本の神話

スサノオノミコト、ヤマタノオロチを退治する!

高天原(たかまがはら)を追放されたスサノオノミコトは出雲(いずも)に降り立ち、ここでヤマタノオロチを退治してクシナダヒメと結ばれる。その後は二人で出雲の地を開拓し、繁栄に導いた。

出雲に降り立ったスサノオノミコト

高天原を追放されたスサノオは、出雲国の肥川(ひかわ)の上流の鳥髪(とりかみ)というところに天下った。

肥川は今の斐伊川(ひいかわ)で、島根県と鳥取県との県境にある船通山(せんつうざん)(1142メートル)を水源として、宍道湖(しんじこ)に注ぐ。

鳥髪は斐伊川(ひいかわ)の上流に位置する島根県仁多郡(にたぐん)のあたりと目されている。

見知らぬ土地に降臨したスサノオはどこに行ったものかと、しばし川辺にたたずんで思案した。

すると、一本の箸が流れてきた。これを見たスサノオは上流に人家があるに違いないと思い、川上を目指して歩き始めた。

そして、ややしばらく歩くと、予想どおり川のほとりに建つ一件の家が見えてきた。

日暮れも近づき、空腹を抱えたスサノオは、何はさて置きこの家で一宿一飯にあずかろうと、勇んで家に近づいて行った。

しかし、戸口の前まで来たとき、中からすすり泣く声が聞こえてきた。

スサノオは少し身を引いて中の様子を窺った。

すると、薄暗い部屋の中で夜目にも美しい少女を中に置いて老人と老婆が力なく座り、三人が手を取り合ってさめざめと泣いているのが見えた。

この光景を見たスサノオは一瞬、躊躇した。しかし、陽はどんどん暮れてくるし、空腹も職に達した。

ほかに行く宛てもない。

そこで思いきって戸を開き、声を掛けることにした。

「ごめんください。私は旅のものですが、見知らぬ土地に来て難儀(なんぎ)をしております。

今夜、お宅に泊めていただくことはできないでしょうか?」

堂々たる姿の男性の突然の来訪に度肝を抜かれた老人たちは居住まいを正し、軽くうなずきながら言った。

「それはお困りでございましょう。こんなところで宜しければ、どうぞお泊まりくださいませ」

老人の言葉に老婆もあいづちを打ち、少女も伏し目がちにスサノオに会釈(えしゃく)をして賛意(さんい)をあらわした。

そして、三人は再び肩を落として沈黙した。

「有難うございます!」

スサノオは心より礼を述べたが、胸中は複雑だった。

三人は何か深刻な事情を抱えているようだが、そんなところに見ず知らずの自分が泊めてもらって良いのだろうか。

とは言うもののほかに行く所もない。

事情を聞いて、自分が力になれるものならなってやろう。

そんな思いを募らせたスサノオは重い口を開いた。

「ところで、突然お邪魔して無理なお願いを聞き入れていただいた上に、立ち入ったことをお聞きするのも失礼なのですが、あなた方には並々ならぬご事情がおありとお見受けしましたが……?」

この問い掛けに、三人は一斉にスサノオに視線を走らせた。

鬱々(うつうつ)とした彼らの表情に一点の曙光(しょこう)が差したようにも見えた。

そして、老人がゆっくりとその事情を語り始めた。

「私は国神(くにつかみ)、大山津見神(オオヤマヅミノカミ・以下、オオヤマヅミという)の子で、足名椎(アシナヅチ)と申します。こちらに居りますのは、私の妻で手名椎(テナヅチ)、こちらは娘で、櫛名田比売(クシナダヒメ)と申します」

三人の正体を知ったスサノオはさらにその事情を尋ねた。

「そのような立派な家柄の方が、なぜこのような深い悲しみにとらわれて、泣いていらしたのですか」

「実は私たち夫婦には八人の娘が居りました。

ところが、毎年、山から八俣大蛇(ヤマタノオロチ)がやって来て、娘を一人ずつ食べてしまい、この娘だけが残りました。

しかし、今年もヤマタノオロチがやって来る時期になり、最後に残ったこの娘も食べられてしまいます。

あの凶暴な大蛇から娘を護ることはできません。それが悲しくて泣いていたのでございます」

アシナヅチによれば、その大蛇はホオズキのような真っ赤な目をしており、胴体は一つだが八つの頭と八つの尾を持っている。

身体のいたるところにヒノキや杉の木が生え、葛が生い茂っている。その長さは八つの谷、八つの峯に及び、腹のあたりにはいつも血が滲んで爛れている、という。

ヤマタノオロチの様子を具に聞いたスサノオは、アシナヅチに自分がその大蛇を倒して娘を救ってやろうと約束する。

そして、首尾よく大蛇を退治した暁にはクシナダを娶りたいと申し出た。

スサノオの言葉にアシナヅチとテナヅチは大いに喜ぶが、嫁がせるからには婿(スサノオ)となる男の素性を知りたいと言う。

これに応じたスサノオが「私はアマテラスの弟で、今しがた高天原から下ってきたところだ」と告げる。

これを聞いたアシナヅチ、テナヅチは「アマテラスの弟君とは畏れ多いことでございます。

命を助けていただいた上に、そんな高貴(こうき)な方に嫁がせていただければ娘も本望でございます」と言ってクシナダを嫁がせることを約束する。

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ヤマタノオロチ退治

ここに交渉はまとまり、スサノオはさっそくヤマタノオロチ退治の準備に入った。

先ずクシナダに術をかけて爪櫛(つまぐし)(爪形の櫛)に姿を変えて自分のミズラに刺した。

将来、妻となるべき女性を肌身に着けることによって、護りとおそうとするスサノオの決死の覚悟が窺える。

また、爪櫛は邪悪なものをはらう神聖な櫛で、それを身に着けることによって振りかかる難を振り払おうとしたのである。

さて、次にスサノオはアシナヅチ、テナヅチに命じて「あなた方は、先ずいくども繰り返し醸(かも)した強い酒(八塩折の酒)を作ってください。また、家の回りに垣根を張り巡らし、その垣根には八つの門を設け、門ごとに桟敷を設けて、八塩折(やしおおり・何回も発酵を繰り返した上等な酒)の酒を満たした桶を置いて大蛇を待ち受けてください」と言った。

さて、準備が整うと、スサノオは老夫婦とともにヤマタノオロチの襲来を待ち受けた。

待つことしばし、アシナヅチの言った通りのヤマタノオロチが現れた。

芳香(ほうこう)の漂う酒を見つけた大蛇は、鎌首(かまくび)をもたげて八つの桶にそれぞれ頭を突っ込んで、酒を飲み始めた。

そして、すべての酒を飲み干すと、大蛇は酔って寝込んでしまった。

そこで、スサノオは腰に差していた十挙剣(とつかのつるぎ・長い剣)を抜き、大蛇をずたずたに斬った。

大蛇からは大量の血が流れ出し、肥河(ひかわ)に流れ込んだ。肥河はさながら血の河となって激しく流れた。

また、大蛇の中ほどの尾を斬ったとき、何かに当たって剣の刃がこぼれた。

不思議に思ったスサノオが剣の先で尾を切り裂いて見ると、中から見事な太刀が出てきた。

スサノオはこの太刀を取り出し、後にアマテラスに献上した。これが、三種の神器の一つ、草薙の剣である。

見事、ヤマタノオロチを退治したスサノオは目出度くクシナダと結婚した。

新居を建てる土地を出雲一円で探した結果、須賀というところに宮殿を建てることにした。

この地を探し当てたとき、スサノオは「この土地に至り、わたしはとても清々しい気分だ!」と言ったという。

そのことからこの土地を須賀と呼ぶようになり、「清々しい」という言葉の起源になったともいわれている。

また、宮殿を新築したとき、この辺りで盛んに雲が立ち上った。その様子を見たスサノオは次のような歌を詠んだ。

盛んに湧き起こる雲が垣根を成して幾重にも宮殿を囲んでいる。

きっと、宮殿にこもった新妻(にいづま)を守るために幾重(いくえ)にも垣根を巡らせているのだろう。

なんと素晴らしい雲の垣根ができたことだろう。(八雲(やくも)立つ 出雲八重垣(やくもやえがき) 妻ごみに 八重垣作る その八重垣を)

そして、アシナヅチを呼んで「あなたを私の宮殿の首長(しゅちょう)に任命しましょう」と言って、稲田宮主須賀之八耳神(いなだのみやのぬしすがのやみみのかみ)という名を与えた。

以降、スサノオは妃のクシナダヒメとともに出雲の地を開拓し、多くの子どもを設けて出雲を繁栄に導いた。そして、スサノオからロ代目の子孫が大国主神(おおくにぬし)であるという。

まとめ

  • 高天原で乱暴狼藉(らんぼうろうぜき)を働いたスサノオノミコトは追放されて出雲に降臨した。
  • そこで、ヤマタノオロチを退治してクシナダヒメと結ばれ、出雲を開拓して大勢の子どもを設け、発展させた。
  • そして、スサノオから数えて六代目の子孫が大国主神だといわれている。